ふるさとの駄菓子 石橋幸作が愛した味とかたち (LIXIL BOOKLET)

仙台駄菓子は今や名が高く、特に有名な3店は創業順に「熊谷屋」「石橋屋」「日立屋」と聞いていました。2018年秋に仙台を訪れた機会に土産として駄菓子を買いに石橋屋さんに行きました。そこで対応してくれたのが社長の石橋佐吉氏でした。伝統的な店構えについて他、いろいろ教えていただき、展示室で先代石橋幸作氏が紙粘土で立体的に再現し彩色した駄菓子模型なども見せていただけました。店先で本書を見かけ、さっそく入手したのが本書です。1960年代に石橋幸作氏が書かれた「駄菓子のふるさと」「みちのくの駄菓子」「駄菓子風土記」を一部再録しながら、石橋幸作氏が日本中から集めた駄菓子が絵と模型の写真で紹介されている、大変美しい本です。また私家版で10部程度しか作られなかった「駄菓子図譜」が綴じ込まれているのも貴重です。更に、石橋幸作氏が収集された明治20年代の菓子商標・レッテルコレクションも面白い。「仙台駄菓子をひもとく」と題して佐藤敏悦氏が8頁書いておられる中の、家業の駄菓子を愛してその歴史を研究した石橋幸作氏によって、駄菓子の民俗文化財としての意義が見出されたという話は、ちょっと感動的です。最後に、ご子息で現社長の石橋佐吉氏、お孫さんで工場長の大林明広氏のインタビューが載っていますが、元来の材料やレシピに石橋幸作氏が蒐集した各地の駄菓子の技を加えながら、現代人の口に合う駄菓子に挑戦しておられる様子から、失われつつある過去の嗜好ではない、未来に繋がる仙台駄菓子への意気込みが伝わってきます。駄菓子の模型の多くは今、博物館明治村に寄贈されているとのことですので、いずれ本書を手に明治村を訪れてみようと思います。