竜馬がゆく (新装版) 文庫 全8巻 完結セット (文春文庫)

勝海舟いいよ。二百数十年続いたんだ。という勝海舟が言った言葉がやけに心に残った。幕末というだけで武士道に生き、刀という時代の遺産を持って自らの藩のために闘った士たちを思い浮かべ胸を熱くできる国民は数少ないだろう桂小五郎、西郷隆盛、大久保利通、岩倉具視など幕末に名を起こし、隣国が植民地支配を受けるなかで、日本を統一することで欧州に対抗できる力をつけ、実際に日露戦争ではロシアと同等の戦いを行うに至った幕末の志士たちの行動力たるや現代には敵うところではない。そのなかにあって、維新後の日本について想い描き、なんの私欲も示さず、国をも動かした人物はやはり龍馬しかいないと思う以前デールカーネギーの「人を動かす」を読んだが、カーネギーは龍馬をみて人を動かす人物のなんたるかを学んだのではないだろうかと思うほど共通点が多い。例として、龍馬は感情的な議論を好まず功労は人に挙げてしまう。その上、志は誰よりも高い。特に矜持を重んじる当時においてそれがどれだけ困難で危険なことであったかは、幾度となく異なる敵に襲われていることからも想像できる。こういう人物になるのは多分無理だが、人や国を動かす人物というのはこういう人間でなければならないのであろうということは学ぶことができたと思う。